病院紹介
病院長挨拶

令和2年度より当院の理事長に就任し、早4年目を迎えました。92歳で亡くなりました父が、60年の歳月をかけて築いた「平和台病院」という総勢170名の組織を引き継いだ途端に、新型コロナ感染症のパンデミック対応に突入する事態となりました。発熱外来設置や院内感染防止対策、コロナワクチン接種、コロナ罹患透析患者さんの入院診療体制など、次々とすべきことが押し寄せましたが、その時々をスタッフ全員で乗り越えて来ることができました。その感染症もやっと5類感染症として新たな形で落ち着きそうです。
当院は、糖尿病専門病院としてチーム医療を実践してまいりました。令和5年度は常勤の糖尿病専門医6名(そのうち指導医3名)、専門医研修医1名、放射線専門医1名、そのほか非常勤医7名(そのうち糖尿病専門医3名)の診療部に、さらに透析専門医1名、専門医制度研修医2名を迎えて総勢18名の医師、糖尿病認定看護師2名、糖尿病療養指導士45名を柱に、薬剤部、看護部、放射線部、検査部、栄養部、リハビリテーション部、事務部の各部門がそれぞれの役割を果たし、連携を取り合って患者さんの療養を支えます。近年は診療情報管理室や地域連携部なども重要な部署として活躍しています。現在4,000人前後の糖尿病患者さんが通院中です。患者さんの心身の訴えを大変貴重な学びの核として、常に学び改善を重ねてより良い医療提供ができるよう日々研鑚しています。
糖尿病は、血管が傷む病気ですので、経年的に進行するいろいろな血管合併症に注意しなければなりません。免疫系の弱さも起こりますので、感染症や癌についても注意が必要です。糖尿病治療とは、糖代謝をできるだけ良好に保つことでそれらの合併症を少しでも減らそうという目標に向かって挑戦することです。医療者と患者さんとがチームを組んで挑み戦い続けます。長い戦いの中、途中で患者さんは挫けそうになりますので、いろいろな工夫をしています。まずは「糖尿病教室」や「糖尿病腎症教室」で病気を学んでいただきます。さらに「透析予防教室」や「メタボ教室」なども受講できます。うまくいかなくなった時に再度受講したり、療養指導や栄養指導、運動療法をうけて目標を再確認したり、糖尿病の同じ戦いをしている仲間たちと心境を分かち合える“はまゆう会”に参加してみたりと、その時々を支えていく仕組みがいくつもあります。足に傷をつけると治りにくいので日常的に注意が必要ですから、「フットケア外来」という足を診る専門診療部門もあります。血管合併症に加えて感染症や癌を適切に診断するために放射線科が重要な役割を担っています。脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈閉塞、腎不全、視覚消失と、どの血管合併症も重大な病態で、損傷を受けた部分は完全には元に戻りません。そういう事態が残念ながら起こってしまった時には、専門の医療機関と連携をとって対処します。当院ではその後の療養をできる限りサポートするために、リハビリや透析もおこなっています。現在100人前後の方(そのうち80人が糖尿病性の腎不全です)が透析を受けておられます。
誰でも自分の人生は自分で決めたいです。そのためには、しっかり体のことや病気のことを学んで、自分の意志と責任のもとに医療をうけることが必要となります。患者さんがどう糖尿病と折り合って人生を過ごすのか、個人個人の違いを尊重して組み立てる「オーダーメイド医療」を実現させるために、私たちは知識と経験を積み重ねていかねばならないと考えております。皆様の頼りとされる病院となりますように精進いたします。
令和5年4月 理事長 山下 優子