入院治療

空腹時血糖値 100から見える世界

Q1.先生は糖尿病患者さんの血糖目標値はどれくらいにしていますか。

A1.出来る限り、可能な限り、糖尿病ではない方と同じ血糖値にするのが目標です。空腹時血糖(前日の夜から10時間以上何も食べない状態で、翌朝、朝食前に測る血糖)100 mg/dl以下、食後の血糖値は160 mg/dl以下を目指しています。
ただ、2016年5月に日本糖尿病学会から出された65歳以上の高齢者については、その人の年齢や健康状態、使用している薬によって、もう少しゆるめの血糖目標を設定することもあります。
しかし、空腹時血糖を100 mg/dl以下に持っていくことによって、糖尿病の患者さんの代謝状態は劇的に変化し、食後高血糖が改善する方も多いのです。ですから、出来る限り、可能な限りは空腹時血糖 100 mg/dl未満にするようコントロールしています。

Q2.空腹時血糖を下げるにはお薬がたくさん必要なのでしょうか。

A2.そうですね。場合によっては数種類の内服薬を組み合わせたり、インスリンやGLP-1アナログ製剤の注射が必要だったりする方もいらっしゃいます。
以前は「インスリン注射」、というと最後の手段のように思われていましたが、空腹時血糖 <100mg/dlを目指すにはやはりインスリンは大変良い手段です。さらに早期にインスリンを使うことで膵臓を保護し、長期にわたってよい血糖コントロールを得ることが出来ます。
また当院を初診する患者さんの多くは、血糖値が非常に高い方も多く、そのような患者さんは内服薬だけでは十分に血糖値を下げることが出来ませんので、一時的にたくさんのインスリンを使用する場合もあります。
どちらにしても空腹時血糖<100 mg/dlを達成することが一番大事で、そのための手段として食事療法や運動療法はもちろんのこと、内服薬、注射薬が必要ということです。

Q3.血糖値を下げるといわれると低血糖が怖いです。

A3.近年は、低血糖を起こしにくいお薬もたくさん出ています。血糖値の下がりにくいお薬を組み合わせた治療をメインに行いますので、必要以上に低血糖を恐れることはありません。
また積極的に空腹時血糖を下げていく場合、多くの患者さんが注射薬を導入します。これらの方々は、血糖値を自分で測定できるよう「簡易血糖測定器」を貸し出しています(保険診療の範囲内)。自分で血糖値を見ながら、治療を継続できますし、低血糖の対処法についても当院スタッフがしっかりとお教えしますので、必要以上に怖がる必要はありません。

あなたを変える、あなたが変わる、シンプルセラピー

Q1.天野先生は当院で「メタボ教室」というのを行っていらっしゃいますが、それはどのようなものですか。簡単に教えてください。

A1.メタボ教室はだいたいBMI 25以上の肥満の方を対象に行っていますが、日本人は、欧米人とは違ってBMI 23以上の小太り程度であっても2型糖尿病になりやすいと言われていますので、最近ではBMI 25未満であっても、腹が出ている人、つまり内臓脂肪がたまっている方も対象にしています。糖尿病を改善する、血糖コントロールを良くするための手段として減量することを目的に、患者さんのモチベーションをあげる為の方法を医師だけではなく複数のコメディカルスタッフとともに介入していく2年間のプログラムが「メタボ教室」です。

Q2.メタボ教室に参加された患者さんは減量に関して効果がありますか。

A2.ありますね。ただ単に「やせてください」と言っても、一人ではなかなか継続が難しいものです。ですから看護師や理学療法士、健康運動指導士などがかかわって運動の仕方や体重の管理の方法を医療スタッフとともに学び、じっくり取り組んでいこうというコンセプトです。
モチベーションを維持するために、腹部CTで内臓脂肪の量、また「インボディ」という体組成計で筋肉量や脂肪量を測ってどのような筋トレを行うのが効果的なのか、具体的に指導しています。
またメタボ教室に参加された患者さんは、3ヵ月後と1年後に「インボディ」を行って、最初の時と比べてどうなったか、評価をします。やはり「少しでも良くしたい」と患者さんも思っていますし、スタッフにいろいろ言われないようにがんばろう、という気持ちも出てくるため、患者さんのモチベーションを維持することが出来ます。

Q3.みんなでがんばってやせよう、という感じですか。

A3.退院して半年後くらい経つと、ほとんどの患者さんが何かしらの「つまづき」を感じるようです。なかなか体重が減らないとか、運動が面倒になってきた、とか・・・。そのようなときに外来で適切に介入を行うことで、その「つまづき」を克服しようというのが最初のコンセプトです。

Q4.メタボで糖尿病の患者さんに対して先生が行っているシンプルセラピーとはどういったものですか。

A4.糖尿病治療あるいは減量治療は長期間にわたるものですので、治療が複雑だと治療そのものがイヤになってしまうことも多いのです。そういうことを避けるために出来るだけ簡単な治療になるよう心がけています。
例えば、注射も飲み薬も最近は朝だけの薬剤がありますし、種類によっては週1回のものもあります。毎日投与する薬も同じ効果ならば週1回に減らしますので、少し運動をしてみましょうか、というように交換条件でより簡単な治療をするよう提示します。
やはり糖尿病治療というものは食事療法と運動療法が基本になりますので、それまで食事や運動がうまくいっていなかった患者さんが、薬の治療がシンプルになることで少しだけ食事や運動を気にするようになると、一気に血糖コントロールも改善することが多いですね。ただ、すべての患者さんにおいてそれがうまくいくわけではありませんので、簡単な注射、飲み薬、さらに血糖測定に関しても1日1回程度にして様子を見て、それでうまく行かなければ次のステップに進んでいくことになります。

Q5.ずばり、その効果は?

A5.患者さんによっても違いますが、複数回の注射や飲み薬から減らした場合ではより取り組みやすいシンプルな治療になることでモチベーションアップになり、血糖コントロールが改善する方が多いですね。
さらに食事や運動も改善されていますし、体重が減る方も多いです。メタボ教室との組み合わせによって、その効果は倍増します。患者さんによっては1年間で20㎏近く体重が減った方もいらっしゃいます。もちろんその患者さんは血糖コントロールもほぼ正常化しました。
もちろん、すべての患者さんでうまくいくわけではありませんが、小太り以上の体格で糖尿病を発症してから比較的早期の患者さんには大変効果の期待できる治療法と思います。

糖尿病や糖尿病腎症で入院される方へ

血糖コントロールをしながら検査を行い、同時に糖尿病についても学ぶことができます。
当院で一番よく行われている例を示します。

月曜日に入院した場合

  第1日目
(月)
第2日目
(火)
第3日目
(水)
第4日目
(木)
第5日目
(金)
第6日目
(土)
第7日目
(日)
治療について 食事療法:身長に見合った標準体重と活動量をもとに適切なエネルギー量を設定し、食事療法を行います。
食事調査:自宅での食事の様子を栄養士が調査します。
個別指導:患者さん一人一人に合わせた栄養士による指導を行います。
 
運動療法:合併症などの評価を行い、健康運動指導士・理学療法士が適切な運動を指導します。
月~金:ストレッチ教室 午前9時~9時30分 ・ 午後1時~1時30分
金:運動教室 午後1時~3時 個別指導
   
薬物療法:糖尿病の状態に合わせ、内服薬やインスリンなどを使用します。
持参薬の確認
薬剤師が
現在の内服薬に
ついて調査します
空腹時血糖が正常化することを目指して内服薬やインスリンなどを調節します。
検査について 血圧測定
身長、体重測定
レントゲン・心電図
採血、採尿 食事負荷試験
尿を1日貯めたのち、インスリンの分泌や
腎機能検査
神経障害
の検査
試験外泊など
頸動脈エコー検査
足の観察
腹部超音波検査      


  糖尿病専門医、糖尿病療養指導士が各種学習会を開催します。
(患者さんの状態、合併症などにより、検査や治療内容に若干の違いがあります。)
糖尿病教室   15時~   15時~      
小グループ学習会 3~5人の小グループで糖尿病について勉強します。入院中に全8回程度です。
個別指導 患者さん一人一人に合わせた指導を適宜行います。
例)インスリンの自己注射指導、血糖自己測定手技指導、等
  第8日目
(月)
第10日目
(火)
第11日目
(水)
第12日目
(木)
第13日目
(金)
第14日目
(土)
治療について 食事療法:身長に見合った標準体重と活動量をもとに適切なエネルギー量を設定し、食事療法を行います。
退院前に栄養士による
個別指導をご家と族一緒に行います
運動療法:合併症などの評価を行い、健康運動指導士・理学療法士が適切な運動を指導します。
月~金:ストレッチ教室 午前9時~9時30分 ・ 午後1時~1時30分
金:運動教室 午後1時~3時 個別指導
 
薬物療法:糖尿病の状態に合わせ、内服薬やインスリンなどを使用します。
空腹時血糖が正常化することを目指して内服薬やインスリンなどを調節します。
検査について 血圧測定
身長、体重測定
    1日血糖検査
24時間連続血糖測定
退院


  糖尿病専門医、糖尿病療養指導士が各種学習会を開催します。
(患者さんの状態、合併症などにより、検査や治療内容に若干の違いがあります。)
糖尿病教室   15時~   15時~    
小グループ学習会 3~5人の小グループで糖尿病について勉強します。入院中に全8回程度です。
個別指導 患者さん一人一人に合わせた指導を適宜行います。
例)インスリンの自己注射指導、血糖自己測定手技指導、等
選べるランチ
月に1回、患者さん自身で食べるものを選んでいただく「選べるランチ」。管理栄養士が選ぶお手伝いをいたします。
クッキングスクール
月に2回、30分~1時間程度で簡単な調理を行います。
透析予防・腎症教室
月に1回、糖尿病腎症第2期~第4期の方を対象に、糖尿病腎症について学びます。月によって対象のステージが異なりますので、外来看護師へお問い合わせください。
メタボ教室
月に1回、メタボの患者さんやメタボが気になる患者さん、健康的にやせたい患者さんを対象に教室を行っています。
運動・ストレッチ教室
健康運動指導士等による軽いストレッチや運動の仕方を実践しながら説明を行います。